私がこの『麦わら海賊団』に入ってから、どれくらい経つんだろう?ナミに航海日誌を見せてもらえば、その正確な時間がわかるけれど。そんなことが重要なんじゃなくて。その間に何が起こったかの方が大事なことで。
もちろん、いろんな戦いや苦難を乗り越え、みんなが夢に少しずつ近付いている・・・。その変化だって大切なんだけど。もっと明確に変わったことがあり、そのことが今の私には無くてはならないものになっている。
それは・・・・・・・・・私と、この海賊の船長との関係。
この海賊団に入ったのだから、ここの船長に憧れていたのは当然のこと。だけど・・・、それは・・・いつしか恋心へと変わっていた。
船長も、普段から「おめぇが好きだ」とか言ってくれてはいたんだけど・・・。あの性格だから、それがどこまで本気なのか、わからなくて・・・。ついに、痺れを切らした私が問い詰めれば、私だから特別なんだと言ってくれた。
それから船長は、普段は仲間として、だけど時には恋人として、私に接してくれるようになった。
そんなことを振り返りながら、私は海を眺めていた。
・・・今日もいい天気だ。なんて、肘をついてのんびりしていると。
「ー!」
ふと、少し遠くから私を呼ぶ声がした。振り返ろうとする前に、私の肘の横に手が伸びてきた。そして、その反対側にも手は伸びてきており・・・。要は、誰かが両腕で私をここに閉じ込めているような状態となった。
・・・・・・誰か、なんて知れたこと。あの声を聞き間違えるはずがない。それに・・・こんな真似ができるのは、この世でもたった1人しかいないから。
私はついていた肘をあげ、その名を呼ぼうとしたんだけど・・・。伸びてきていたはずの腕がいつのまにか元に戻っていたらしく、今度は真後ろで、また私の名前を呼ばれた。
「!」
呼ばれたのだから返事をしなくてはならない。そういう意味でも、次こそは彼の名前を呼ぼうと振り返ろうとする。・・・でも、その前に、彼の左手が私の右腕を、右手は左腕を掴むようにして、ギュッと抱きついてきたので、それも結局叶わなかった。
「飯だ、飯!!」
言っていることだけを考えれば、これは仲間に対する普段の接し方で。・・・だけど、やっていることは、仲間に対することであるわけはなく。
「うん、わかった。ありがとう、ルフィ。」
「おう!」
「・・・・・・ルフィ?」
「なんだ?」
「その・・・。この状態だと、動けないんだけど・・・?」
「あ、そっか!わりい、わりい!」
そう言いながら、やっと両手を離してくれた船長は、今度は片手を差し出した。
「ほら、行くぞ。」
・・・『時には』恋人として、なんて言い方は正しくなかったのかもしれない。
と思いつつ、嬉しそうにしている船長の手をとり、私たちは食堂へ向かった。
私たちが入ると、既にみんな揃っていた。みんな、私たちの関係は知っており、特に気にする風でもなく、いつも通りの食事が始まった。以前の食事風景とも、ほとんど変わりない。ルフィは相変わらず、食事中は私に構うことはほとんど無い。ただ、『ほとんど』であって、たまには「これ、も食ってみろ。美味いぞ?」などと渡してくれるときがある。・・・・・・最初は、私も含めみんなが驚いたものだ。あのルフィが人に食べ物を譲るなんて、と・・・。まぁ、それはルフィに対して失礼だし、今となっては、みんなもそれが普通のことだと思うようになっていた。
今日もいくつか分けてもらったけど、やっぱり誰も気にしなかった。私も普通に「ありがとう」と言って、それを食べ、食事を終えた。横に座っているルフィも満足そうにしている。いや、ルフィだけじゃない。みんなも美味しいご飯を食べ終わり、満足げに一服している。
そんなとき、航海士であるナミが口を開いた。
「さて・・・。みんなに言っておくけど。最近、気候も安定していて、そろそろ次の島に近いと思うの。」
「おぉ!島が近いのか!にっしっし。楽しみだな、!」
「うん!」
「だから、見張りをするときは、気をつけて見るようにしてね。」
「おぉし!んじゃ、オレ見てくる!!も行こう!」
「えっ?!わっ!ちょっと・・・!」
隣に座っていたルフィが私の腕を掴むと、そのまま外へ飛び出した。
まったく・・・。全然、私の言うことを聞こうとしてくれないんだから・・・。
だけど、悪い気なんてするわけもなく、私もルフィの横でまた海を眺めることにした。
「島、見えねぇかなー?」
「そんなにすぐには見えないよ。」
「早く行きてぇな〜!」
ルフィは明らかに、うずうずしていた。島に近付くと、いつもこんな感じだ。・・・子供っぽいなぁと思う。全然、船長らしくないなぁって。でも、こういうところがルフィっぽくて。そして、船長はこんなルフィでなくちゃダメで。
なんて、ルフィの良さを考えながら、私はルフィの方ばかりを見ていることに気が付いた。・・・まぁ、海の方はルフィが見てくれているし。それに、すぐに見えるわけはないんだから、と思っていた矢先に、ルフィが「あ!」と叫んだ。
「どうしたの?」
「ほら、!見てみろ!何か見えるぞ!」
「え?!ウソ・・・。いくら何でも早すぎなんじゃ・・・。」
「でも、ほら!あっちの方!」
そう言って、ルフィが指した方向に、確かに何かが見えた。・・・島かもしれない。
「とりあえず、みんなに知らせてくるよ!」
「頼んだ!」
まだナミたちは食堂に残っていたはずだと思い、私は食堂へ戻った。
急いでドアを開けると、そこには予想通り、何人か残っていて・・・。ナミの姿もあった。
「ナミ!」
「どうしたの、。」
「それが・・・。島らしきものが見えたの!」
「ウソ?!そんなに早いなんて・・・。」
ナミも私と同じように驚いている。でも、私も見たんだもの!・・・そう思っていると、ナミの正面に座っていたロビンが何かを思い出したらしく、話をしてくれた。
「そういえば。昔、聞いたことがあるわ。この辺りには、元々海賊をやっていた人たちによって作られた、人工の島があるんだって。」
「元海賊が?!一体、何のために・・・。」
ロビンの話を聞いて、少し怖くなったのか、ウソップが怯えた顔つきで、ロビンに問いかけた。
「何でも、自分達が海に出ていたとき、食糧なんかを調達するのに苦労したそうよ。でも、海賊を助ける人なんて、そうそういない。そこで、最初は仲間たちのために、今では海賊など裏稼業の人たちのために、補給基地の役割を果たしているらしいわ。」
「なんだー・・・。だったら、上陸しても大丈夫そうだな!」
「えぇ、おそらくは。私も行ったことがないから、わからないけれど。」
「だけど、そろそろショッピングもしたいし・・・。ねぇ、ロビン、。一緒に行かない?」
「構わないわ。」
「うん、行ってみよう!・・・それに、どうせ外にいる船長が上陸したがってるよ。」
「それもそうね。それじゃ、その島に向かいましょう!」
ナミの声で、その場にいたクルーたちが上陸の準備に取り掛かった。ウソップも、ロビンの説明で『島に入ってはいけない病』が発症しなかったみたい。
私はルフィに報告しようと、さっきの場所へ戻った。
「ルフィ!」
「よっ!」
ルフィは私の呼びかけに返事をしながら、ゴムの反動を活かして、高くジャンプした。そして、私の後ろへ着地し、またギュッと後ろから抱きつかれてしまった。
まぁ、いいかと思い、その状態のまま、私はロビンから聞いた話を説明した。
「あのね、あの島は――。」
そこがどんな場所であろうと関係ないといったルフィは、私の話を聞いても、結局上陸するんだろとでも言いたげな様子だった。・・・それもそうだ。ルフィはウソップと違って、『島に入ってはいけない病』が無いからね。
「――とにかく。私はナミとロビンと一緒に買い物しようと思うの。」
「そっか。・・・そんじゃ、そのあと、2人で散歩しよう!オレはその間、何かおもしれぇとこがねぇか探しとくから!」
「うん、わかった!」
そんな会話をしながら、その状態のまま、私たちは島に向かった。船室から出てきていたみんなにもそれを見られており、呆れられていたらしい。・・・というのを、買い物中にナミとロビンに教えてもらった。
そのときの私は、みんなに見られていたってことに少しは気付いていたけど、今更気にしなくてもいいかなって思ったんだよね。
・・・でも。この船の乗員以外にも見られていたとは、気付けていなかった。
「ありがとうございやしたー!」
“カロンコロンカラン・・・”
買い物を終え、私たちは店を出た。
ここの島の人たちは、たしかに見た目は怖そうで、いかにも!って人が多いんだけど・・・。でも、私たちが麦わらの一味であるということは知られており、「海賊の人たちなら何でも買って行ってくだせぇ!」って感じで、とても丁寧に対応してもらった。・・・・・・一般の人なら、どうなっていたかは考えないでおくけれど。それに、私はこの一味の一員なのだから。
そんなわけで、私たち海賊にとっては、とても落ち着いて買い物ができる環境だった。
「うん、いい買い物ができた!あとは、船に戻るだけだね。」
「・・・・・・そっか。アンタは早く船に戻りたいものね〜?」
「べ、別にそういうつもりで言ったんじゃなくて・・・!」
「・・・あぁ、そういえば。ルフィを待たせてるんだったわね?」
「ちょっと、ロビンまで〜・・・。」
「いいじゃない。本当、アンタたち仲良さそうで、何よりだわ。」
「ふふ・・・そうね。妬けてしまうわ。」
「えぇっ?!ロビン、まさか・・・。ロビンも・・・??」
「ナミもそうよね?」
「ん?・・・うん、もちろん。を取られて、妬けちゃうわ。」
「え?私??」
「えぇ。私もナミも、ルフィに妬けるのよ。私たち、のことが大好きだから。」
「私だって、ナミのこともロビンのことも・・・みんなのことが大好きだよ!」
「でも、ルフィが1番。なんでしょ?」
「ナミ〜・・・!」
「ふふふ。」
ロビンに笑われ、ナミにも意地悪っぽく言われ・・・。でも、2人のことも本当に好きだから、こうして女3人で楽しい時間を過ごせて、よかったと思う。もちろん、みんなのことも大好きだよ。・・・とは言え、ナミの言う通り、1番はルフィだけど・・・・・・。と、とにかく!今それは置いといて!!
私たち3人は船に戻ったけれど、ルフィの姿はまだ無かった。
「。私とロビンは先に部屋に戻ってるわよ。」
「うん、わかったー。」
「の荷物、持っていくわね?」
「ありがとう、ロビン。」
そう言って、しばらく待っていたんだけど・・・。ルフィはなかなか帰って来なかった。
・・・おかしい。何かに巻き込まれたんじゃないだろうか。ルフィならあり得る。
ちょうどデッキに出ていたフランキーに、私は告げた。
「ちょっと、ルフィを探して来る!」
「おぉ。1人で大丈夫かー?」
「うん、ありがとう。大丈夫!遠くまでは行かないから。んじゃ、行って来ます!」
ここで、私が1人で行こうとしなければ・・・。
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初ONE PIECE&ルフィ夢!!自分でも、まさかのルフィさん(笑)。私、ルフィ夢を読むのは大好きなのですが、書くことはないだろうと思っていました。それに、「ONE PIECE」ならサンジさんを書くだろうと・・・。なので、ビックリです(笑)。と言うか、捏造でごめんなさい・・・orz
しかも、何だか長くなってしまって、まさかの前編・・・(汗)。もう、本当すみません・・・。
後編がアップされたときも、お付き合いいただけると、ありがたいです・・・!と言うか、前編だけでもお付き合いいただけて、誠に嬉しい限りです!ありがとうございます!!
('09/04/10)